■プリントという指標
一昨日、アンセル・アダムス展で購入したファインプリント2点が手元へ送られてきた。何度見てもやはり素晴らしい作品だ。モノクロームプリントとしてひとつの指標と言える。
ところで・・・
現在の業務はデジタル100%。ゆえに入力から出力まですべて一人で処理している。レタッチャー的なアシスタントは使わない。デジタルだからこそすべてを自身一人の目と感性でフィニッシュすることができるし、そこに意味があると考えている。
特に最終納品が「プリント」の場合。目の前で直接クライアントに評価される。そこに曖昧さなどない。私は以前、空間系のデザイナーを20年間勤め、その後、デジタルフォトの世界へと転向した。
その空間系写真の世界でナカサアンドパートナーズという写真家集団がある。日本の商業空間系写真においてナンバーワンのクオリティと言っていい集団だ。今は法人化され、立派な会社組織になっている。
10数年前、まだ法人化される以前、デザイナーとして初めてその名を知り、そのナカサの当時のチーフカメラマン・奥村浩司氏に出会い、私がディレクションやデザインしたものも含めて多くの空間を撮っていただいた。
そのとき、彼の実に丁寧に仕上げられたカラープリントに出会い、そのクオリティの高さに驚くとともにこういう世界もあるのか?と感銘を受けたことを今でも記憶している。
彼は当時、専属のプリンター(機械ではなく、プリント職人)を持ち、彼の写真の傾向を熟知したプリンターの手によるプリントは日本はもとよりおそらく世界中のどこへ出しても恥ずかしくないクオリティのものだった。
その後、奥村氏はナカサから独立し、現在も各方面で大活躍されている。奥村氏と一緒に仕事をした数年間、彼のオリジナルプリントに直接触れた経験が今の私の大きな指標になっている。
今、私がどこへ出しても恥ずかしくない「プリント」。そう自信を持ってクライアントの前に出せるのも彼のオリジナルプリントをこの目の奥底に焼き付けてきたからこそだ。歳は少し下だが今でも「師」として感謝している。
ウェブ時代に写真を見るという行為は好むと好まざるとに関わらず多岐に渡る。しかし、写真クオリティということについては今ほど指標が曖昧な時代もない。
自身の体験からだがやはり写真のクオリティの指標はプリントにあると思う。手元にアンセル・アダムスのプリントが届き、改めてその思いが強くなる。
こう書いて、私的なプリントをほとんどしていないことがなんとなく後ろめたい。仕事では山ほどプリントしているのに・・・言うは易しである。(笑)
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