2008.10.12

■プリントという指標

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一昨日、アンセル・アダムス展で購入したファインプリント2点が手元へ送られてきた。何度見てもやはり素晴らしい作品だ。モノクロームプリントとしてひとつの指標と言える。

ところで・・・

現在の業務はデジタル100%。ゆえに入力から出力まですべて一人で処理している。レタッチャー的なアシスタントは使わない。デジタルだからこそすべてを自身一人の目と感性でフィニッシュすることができるし、そこに意味があると考えている。

特に最終納品が「プリント」の場合。目の前で直接クライアントに評価される。そこに曖昧さなどない。私は以前、空間系のデザイナーを20年間勤め、その後、デジタルフォトの世界へと転向した。

その空間系写真の世界でナカサアンドパートナーズという写真家集団がある。日本の商業空間系写真においてナンバーワンのクオリティと言っていい集団だ。今は法人化され、立派な会社組織になっている。

10数年前、まだ法人化される以前、デザイナーとして初めてその名を知り、そのナカサの当時のチーフカメラマン・奥村浩司氏に出会い、私がディレクションやデザインしたものも含めて多くの空間を撮っていただいた。

そのとき、彼の実に丁寧に仕上げられたカラープリントに出会い、そのクオリティの高さに驚くとともにこういう世界もあるのか?と感銘を受けたことを今でも記憶している。

彼は当時、専属のプリンター(機械ではなく、プリント職人)を持ち、彼の写真の傾向を熟知したプリンターの手によるプリントは日本はもとよりおそらく世界中のどこへ出しても恥ずかしくないクオリティのものだった。

その後、奥村氏はナカサから独立し、現在も各方面で大活躍されている。奥村氏と一緒に仕事をした数年間、彼のオリジナルプリントに直接触れた経験が今の私の大きな指標になっている。

今、私がどこへ出しても恥ずかしくない「プリント」。そう自信を持ってクライアントの前に出せるのも彼のオリジナルプリントをこの目の奥底に焼き付けてきたからこそだ。歳は少し下だが今でも「師」として感謝している。

ウェブ時代に写真を見るという行為は好むと好まざるとに関わらず多岐に渡る。しかし、写真クオリティということについては今ほど指標が曖昧な時代もない。

自身の体験からだがやはり写真のクオリティの指標はプリントにあると思う。手元にアンセル・アダムスのプリントが届き、改めてその思いが強くなる。

こう書いて、私的なプリントをほとんどしていないことがなんとなく後ろめたい。仕事では山ほどプリントしているのに・・・言うは易しである。(笑)

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2008.09.25

■アンセル・アダムスのファインプリント

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写真展で息を呑む・・・という経験をしたのは生まれて初めてのことだった。

アンセル・アダムスの作品についてはウェブや出版物などで見聞きしたことは何度かあった。しかし、直接オリジナルプリントを見たのは今回が初めて。

昔から各方面で絶賛されている彼のオリジナルプリントとはどんな程度のものなのだろうか?不遜にもそんな浮ついた気持ちで会場へと足を運んだ。

彼の写真展は国内でも過去、何度となく開催されている。そういう情報は耳には入っていたが行きたい!というほどの気持ちには至らなかった。

自分がモノクロームの銀塩プリントにあまり縁がなかったこともあったし、ゾーンシステムなるものを確立した半世紀前のアメリカの単なる風景写真家という印象でしかなかった。不勉強である、まったく。

それがなぜ・・・?

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2008.01.19

■グループ写真展「東京」

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昨日、M8&R-D1のお仲間たちの神楽坂ギャラリーフラスコで開催中のグループ写真展「東京」の初日へ行ってきました。

「東京」というテーマでそれぞれがそれぞれの視点で表現した40点の写真はなかなか見ごたえありました。人のモノを見る目というのはそれぞれこんなにも違うものなのか?とあらためて感じた次第。

お気に入りのレンズやモノとの距離感でそれぞれの視点が興味深く拝見できました。特筆すべきは印刷が印画紙を使っていること。もちろん元のデータはデジタルデータなのだけれど紙が違うと雰囲気がかなり違う。

私も印画紙世代なのであの独特の光沢感から伝わる艶っぽさや深みが味わい深く感じられました。噂どおりなかなかの力作ぞろいでしたねえ。

と、ここまでは真面目な感想・・・。

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あとは初日ということもあって訪れる人もそう多くはなく、それがゆえそこは好き者の集まり、カメラやレンズ談義があちこちで盛り上がりました。

それぞれの志向のM8が数台は当たり前だけれども、なぜかハッセルの500CMのクロームとブラック、あとローライなんかがあったりして相変わらずのただならぬ雰囲気。

そんな中アタシの40Dは浮いているようないないような・・でも実物を見たお仲間の印象は悪くはなかった。たくさんのカメラやレンズをお使いの方々だからファインダーを覗いてシャッターを押せばピタリと分る?

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それでも極めつけは終わり際に来たnoyanさんのD3!NIKONのロゴはマジックでわざとへたくそ?に塗られ、付いているレンズはなんだかさっぱり分らないシロモノ。ニコンの関係者が見たら卒倒しそうなお姿・・。

レンズはいつもの手作り?レンズだが「VEST POCKET KODAK」というネーミングだけは読めた!。なんじゃそりゃ!ファインダーを覗かせてもらったら暗くて何が写っているのかさっぱり?

ホント、ちょっと変だけど素敵な仲間たちばかり。(笑)

で、これが噂のB0モノクロプリント。M8でどこまで伸ばせるか?という試み。やはりデカイ!これだけは実物を見ないと分らないですねえ。

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在廊している方々とのお話や他の方々の作品も含め、M8&R-D1ユーザーには興味が尽きないグループ展でした。

しかし、40Dはいいけどこの標準ズームのワイド側の歪曲はさすがというか?なんというか・・?う~ん。ISも付いて使いやすいレンズなんですけどねえ・・。(苦笑)

All photo / CANON EOS-40D with EF-S17-85mmF4-5.6 IS

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2008.01.01

■あけましておめでとうございます

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みなさん、あけましておめでとうございます。

新年のグリーティングフォトは昨年撮った中から特に印象的だったものを・・・

ディズニープロダクションと日本のデザイン集団WA-Quがコラボレーションした

「interiorlifestyle Design Click Disney+WA-Qu」での1枚。

ディズニーテイストと日本の和のテイストが見事に融和した空間とプロダクツの数々・・・。

とても印象的な空間撮影でした。

いつの時代も新鮮な出会いから生まれるクリエイションは存在します。

今年も公私ともに写真を通して素敵な出会い、インスピレーション、コラボレーションを願って・・・。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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2007.12.31

■私的カメラオブザイヤー2007

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今年1年、様々なカメラでたくさんのモノを撮らせていただいた。そんな中でもやっぱり人を撮ることの難しさと楽しさを実感した1年だった。

人を撮るということは翻ってみると自分自身が写るとも言えるわけで・・・その人との関係性やその場の空気、そしてなによりその人のこころの動きが写る。

仕事での撮影は一眼レフがほとんどだが、その場の空気を大切にしたいときは機材の選択もそれに見合った選択をしたい。今年はこのカメラを積極的に使ってみた。

正直、当初は仕事でこれほど使えるとは思ってもみなかった。が・・・その場の空気感や距離感がやはりいい。

撮る側と撮られる側の間に独特の空気感を生む。このカメラとの出会いとこれを使って撮った人物写真は新たな発見とここちよい刺激を与えてくれた。

たいていの場合、このカメラって仕事で使えるんですか?と聞かれる。そんなときは「このカメラで撮れないモノは山ほどあるんですけどね・・でもこのカメラでしか撮れないモノもあるんですよ」と。

2003年から大晦日に私的かつ勝手に行っているカメラオブザイヤー。その年に購入したものという厳格なものではないけれど1年間使って私が一番良かった!と感じたカメラ・・・。

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2007.04.21

■「カムイミンタラ」

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北海道で精力的に素晴らしい写真を撮り続けている飯塚達央氏。今日は夕方から目黒で開催されている氏の写真展「カムイミンタラ」へ。

私は常日頃から、表現者としての写真家ならばデジタルだとかアナログだとかを意識して作品を残すのではなく、表現手法としてそのときのベストな手法をセレクトすべきだ!と考えている。

そういう意味でデジタル・アナログを問わない撮影。局紙和紙ピクトランを使ったデジタルモノクロームプリントの試みとそのクオリティは見ごたえがあってとても共感を覚えた。

会場の都合で作品の量とレイアウトが必ずしも本意ではなかったようだが、雄大な風景を撮った一連の作品はもう少し大きな会場で距離を置いてじっくりと見ても耐えうる作品ばかり。

そしてとりわけ氏の作品らしいと言っては失礼だが、ローライで撮った街や人の表情は逆に引き込まれるような凝縮感があった。

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椅子に腰掛けてじっくり見ることのできるご家族を撮ったものやカラー作品などの数冊のブックもなかなか素敵だ。特に「草原写真館」は大好きだ。

昨年のビッグサイト以来、約1年ぶりの再会だったが、来場者一人一人に氏のほうから声をかけるその誠実さも相変わらずだ。声をかけられる人はうれしいと思うけどそこまでする写真家はいないよ~と冗談交じりにご忠告(笑)。

人の写真作品を積極的に見て回ることをあまりしない私が氏の作品と人柄には惹かれている。

ソウルでの写真展も決まり、さらに本の出版も実現しそうなほど追い風が吹き始めた。ちょうど一回り年下の氏の今後の活躍を願うばかりだ。

丁寧に創られたデジタルモノクロームプリントは一見の価値がある。今月29日まで開催されている。

>>飯塚達央写真展「カムイミンタラ ~北のウォームトーン~」4月17日(火)~4月29日(日) ギャラリーコスモス

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2007.03.10

■一瞬の出会い・・・

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カメラを向けられると真剣な表情があまりできないんです・・・と笑いながら言う。

生来の素敵な笑顔持ち。彼女の笑顔は撮っていてこちらまで笑顔にしてくれる。いつ撮っても笑顔・笑顔・・・。

このブログにも何度か登場している後輩デザイナー。娘ほどの年の差だがいつも笑顔を向けてくれる。

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最初の頃はカメラを向けると照れてばかりいたがだいぶ慣れてきた。

「写真は真を写す」という言葉。素直に同意はできないが、ただ人の表情などはその通りだなと思う。

写真はその人の本質を正直に写す。

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人の一瞬の輝く表情に出会えることは写真をやっているものとして一番うれしいものだ。

もちろんレンズによって表情と空気感も違う。絵筆のようなもの・・・。とはよく言ったものだ。

No.1& No.2 / LEICA M8 with NOCTILUX-M 50mmf1.0
No.3 / CANON EOS-5D with Carl Zeiss Planar T*85mmf1.2 60years

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2007.01.01

■あけましておめでとうございます

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みなさん、あけましておめでとうございます。

新年のグリーティングフォトは毎年悩むのですが・・・

今年は昨年「ジョン・レノンミュージアム」で撮らせていただいた1枚。

「IMAGINE」の曲が流れる中、厳かでとても印象的な撮影でした。

いつの時代も、-IMAGINE PEACE- の思い。

そして写真を通して様々な出会い、インスピレーション、コラボレーションを願って・・・。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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